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スタートまでの流れと現在

<協同の発見>掲載  新潟高齢協10年の歩み

2016年1月発表 

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注目

「ささえあい生協」スタート!

高齢者の知恵と経験・技術を活かす、多世代・地域密着・自立のネットワーク
 
ささえあいコミュニティ生活協同組合新潟
理事長 高見 優
 
 「寝たきりにならない、しない」「元気な高齢者がもっと元気に」~そんな地域社会を実現する世代を超えた支えあいの核となるのが「高齢協」です。
 こんなキャッチコピーが新潟にも届くようになって約10年―。2006年2月、新潟県にもようやく高齢協(高齢者生活協同組合)が誕生した(全国で35番目)。正式名称は「ささえあいコミュニティ生活協同組合新潟」(黒岩卓夫 前理事長)で、この組織の性格・目的を表わそうとみんなで考えて命名した(略称:ささえあい生協)。
 新潟高齢協づくりの最初の試みは、映画「病院で死ぬということ」(山崎章郎原作、市川準監督、中高年雇用福祉事業団製作)の上映会が行われた13年前のことだったが、不発に終わる。2回目の取組みも失敗し、その後新たなメンバーで本格的な準備会を結成して約3年…。3度目の正直でようやく創立総会の開催に成功した後、申請からわずか1か月足らずの超スピードで県知事から認可された、県内初の福祉型生活協同組合法人である。

1.ある日の電話から

Q:「もしもし、ささえあい生協ですか? そちらはどんな活動をしているのですか?」
A:「主に、福祉、生きがい、仕事おこしを事業・活動の3本柱にしています。」
Q:「組合員になると、どんな特典があるのですか。」
A:「ささえあい生協は、組合員が協力し合って仕事をおこしたり、福祉事業を行なったりしますが、組合員一人ひとりの主体的な参加がなくては成り立ちません。ですから、すぐにこんな得をした!ということは感じにくいかもしれません。あえて特典をあげれば、豊かな高齢期を自分たちの手で作っていくことができる、ではないでしょうか。」
Q:「加入するのに年齢制限はあるのですか。」
A:「高齢者だけの団体のようなイメージがあるかも知れませんが、年齢制限はありません。」(後記参照)
Q:「私は70歳ですが、雇ってもらえますか。」
A:「組合員自身による出資・経営・労働の原則を持っていますので、基本的には<雇う、雇われる>という関係ではありません。ですから、まずは組合員になっていただき、地域に必要な仕事を見つけ仲間と一緒に働く場をつくったらよいと思いますが…」
Q:「日常生活で困っていることがありますが、相談にのってもらえるのですか。」
A:「組合員の中には様々な職種の人がいますので、医療、福祉、住宅、税務、法律、年金などの相談に応じます。まだ不十分ですが、地域のネットワークで何とか解決のお手伝いができるよう努力します。」
Q:「何か生きがいや文化活動に参加したいと思っていますが、どんなものがありますか。」
A:「民謡クラブ、市民後見人養成講座などをやっていますが、これからメニューを増やしていきます。全国では、合唱団、絵手紙、陶芸、ダンス、教養講座など様々な活動をしています。」
Q:「入会金はどれくらいですか。また、加入するにはどんな手続きが必要ですか。」
A:「出資金(一口5000円)が必要です。加入申込書をお送りしましょうか。」
Q:「よく分かりました。加入申込書を送ってくれませんか?」
A:「ありがとうございます。さっそく、パンフレットと会報などを一緒に送りますので、よろしくお願いします。」(ささえあい生協の連絡先は後記のとおり)

2.協同組合運動の発展と高齢協の結成

 映画「病院で死ぬということ」を製作した「中高年雇用福祉事業団」が作られたのは1970年代のことである。同事業団は、失業者や中高年の仕事づくりをめざす団体で、各地の自治体から、公園の清掃や病院の総合管理などの仕事を受託してきたが、80年代には労働者協同組合(ワーカーズコープ:注1)へと発展し、生活協同組合との間で物流などの提携事業にも乗り出した。90年代に入ると、国際活動にも参加するとともに、「協同総合研究所」を設立して協同の労働・経営・運動の指針「協同労働の協同組合の原則」をまとめた(その後改定され現在の新7原則は2002年制定~注2)。
 ちょうどその頃、わが国は高齢社会(65歳以上人口比14%)を迎え(1994年)、家族や地域の共同体の在り方が激変した社会状況下で、高齢者介護の問題が急浮上してきた。また、労働者協同組合で働く人の中には、定年後も働き続けたいと希望する元気な高齢者がおり、1995年の阪神大震災以降、市民ボランティアの気運の高まりとあいまって、姉妹団体=高齢者協同組合結成の動きが始まったのである。
 当初は、まだまだ事業の規模・数とも小さく模索状態であったが、2000年の介護保険法制定の前後からヘルパー養成講座を主催し、その修了生たちを中心に訪問介護やデイサービスの福祉事業所を開業して経営に乗り出した。このとき採用された方法が、「出資」「経営」「労働」を組合員全員が三位一体のものとして担い合う「協同労働の協同組合の原則」であったという。
 現代の多くの企業は、株主(出資者)と雇う者(経営者)と雇われる者(労働者)が別々で、「出資と経営と労働の分離」が一般的である。これだと、経営者だけが経営責任を負うのに対し労働者は経営に参加せず責任を負わないが、協同組合は、出資した人たちが働きかつ経営責任を分かち合い、民主的な手続きを踏んで事業を遂行するのが原則だ。ただし現実には、組合員の意識や状況に応じてさまざまな方法で柔軟に運営されてもいるようである。
 こうして、全国各地の高齢協は、地域福祉サービス事業を中心にして次第に事業高・数とも拡大していった(2005年度:事業所数132、事業高44億3400万円)。そして、草刈、住宅リフォーム・営繕、産直、朝市などの仕事おこし事業や、男の料理教室、パソコン教室、太極拳、陶芸、山歩き、カラオケ、囲碁・将棋や各種講座などの文化活動・生きがい活動なども進めて、組合員を増やしてきた(2005年度:36,354人)。また高齢協は、自助・共助・公助を切り離されたものとせず、それらをうまく融合させて地域づくりをしていくことが重要だと考えているので、自治体から老人福祉センターや憩いの家などの管理・運営業務を指定管理者として積極的に受託している。
 2001年には、日本高齢者生活協同組合連合会を結成し、各地の高齢協の経験や知恵を学びあい、相互に励ましあい連携を深めている。ささえあい生協も近く加入する方向で検討している。

3.地域の中で、新しい働き方を求めて

 わが国の雇用環境は激変している。経済のグローバル化、規制緩和の嵐の中でリストラ合理化が進み、派遣労働、ニート、フリーター、ワーキング・プアなどが増大し、過労死を招く恐れのあるホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)が提案されている。そして、地域社会は疲弊している。一部の輸出産業・上場企業の好調に対して、一次産業・地域経済は地盤沈下している。地域の人々は、高齢者も大人も子どもも様々な問題を抱え、悩み苦しんでいる。
 実は、どこの先進諸国の福祉・地域政策も国際的な市場競争の激化により行き詰まり、多かれ少なかれ雇用縮減、非正規雇用の増加など共通の事態に追い込まれたのである。そこで各国では、失業者、子育てを終えた女性、高齢者など雇用市場にアクセスできない人々の働く意志と活力を生かすシステムを作り出した。米国のNPOや欧州の協同組合などである。中でもイタリアの「社会的協同組合法」(1991年)は、伝統的な従事組合員の他に利用組合員、ボランタリー組合員、公共団体の出資を認め、起業しやすく地域の雇用を促すさまざまな優遇措置を採用している。欧州におけるこの種の協同組合の実勢は、6万企業、就労者130万人に及ぶという。
 協同組合の協同労働は、自発的で非営利・有償の労働である(図2)。協同労働は欧州に始まったわけではなく、日本の中に継承できるよき伝統や文化がある、と指摘するのは、ノーベル経済学賞受賞(98年度)のアマルティア・セン教授(ケンブリッジ大学)だ。「私は、協同組合とは一種の拡大された家族であると考えるのです。それは、人びとの相互の関係の中での社会的家族、協同の家族のようなものなのです。」と。これは、孟孔の教え「修身・斉家・治国・平天下」にも通じるものだろう(セン教授はインド出身)。儒教の影響を受けた日本の家族制度には確かに否定的な面も多いが、肯定的な面を継承するのは、言葉だけ「美しい国」を目指す首相ではなく私たち地域住民でなければならない。セン教授は、「人類の歴史に協同は生きており、もっと広い協同のなかでこそ、人類の未来を語れるのではないでしょうか。」とも言う。
注1:日本労働者協同組合連合会は、労協連組合員数約4万人、2005年度総事業高215億2200万円。政府(内閣府)が毎年1回発行する「国民生活白書」は毎回テーマを決めている。平成18年版国民生活白書のテーマは「多様な可能性に挑める社会」で、主に適職を探す若年者、育児期の女性、人生を再設計しようとする高齢者をターゲットにして、職業生活、家庭生活、地域活動それぞれの現状と障壁について分析が行われている。「第3章 高齢者の人生の再設計」の中にあるコラム欄で労働者協同組合を取り上げ、「資本と労働を持ち寄る新しい働き方」というタイトルでワーカーズコープ(労働者協同組合)、ワーカーズコレクティブ(専業主婦が中心)の働き方や実勢を紹介している(図1参照)。 
 コラムは、ワーカーズ・コープは男性の割合も高く、「その自由な働き方は大きな可能性を持っているのではないだろうか。」と結ばれ、白書(政府)もワーカーズコープなどに大きな関心を寄せて注目している。  
注2:協同労働の協同組合の7つの原則(2002年)
  1. 働く人びと・市民が、仕事をおこし、よい仕事を発展させます。
  2. すべての組合員の参加で経営を進め、発展させます。
  3. 「まちづくり」の事業と活動を発展させます。
  4. 「自立と協同と愛」の人間に成長し、協同の文化を広げます。
  5. 地域・全国で連帯し、協同労働の協同組合を強めます。
  6. 「非営利・協同」のネットワークを広げます。
図1
図2

4.はじめての福祉事業所の経営は、苦労の連続…

 ささえあい生協は、豊かな高齢社会を地域住民で支えあうことを理念に掲げている。「富山方式」など各地の民間団体が切り開いた手法を国が後追い制度化したのが、介護保険法改正によって新設された地域密着型「小規模多機能型居宅介護サービス事業所」である。新潟市で最初の指定を受けたのが、私たちささえあい生協の『ささえ愛あわやま』だ。これまでは、訪問介護、デイサービス(通い)、ショートステイ(泊まり)のサービスを別々の事業所(介護員)からバラバラに受けていたのを、住み慣れた地域に密着した同一事業所(顔なじみの介護員)の一貫した丁寧な介護サービスを受けることによって、要介護者の表情が穏やかになり、状態が良くなって残存能力を活かして調理に参加するなどの成果を挙げつつあり、利用者・家族からたいへん喜ばれている。
 しかしその反面、事業所の経営は、開業費などの初期投資や賃貸住宅の維持・改修費などの出費がかかる一方で、介護報酬(収入)は2か月遅れ給付なので資金繰りに追われたり、夢(理想)と現実の落差に悩んだり、運営方法を巡って衝突したり…、と慣れないことばかりで苦労の連続だ。このように福祉型生協は、購買生協と異なり安定収入の基盤は介護保険事業を中心とせざるをえない面があるので、これからもデイサービス、宅老所、グループホームなど様々な福祉事業・活動を展開したいと考えている。さらに、介護保険対応事業だけでなく、介護保険ではできない生活支援など生活全般にわたるきめ細かいサービスを、受ける側・する側双方が協同し、若い人たちにも生きがいある仕事の場を生み出すなど、新しい地域社会づくりの可能性を追求していきたい。

5.ささえあい生協は、仲間(組合員)を増やし、仲間とともに夢の実現をめざす

 「生ある限り人間としての誇り・生きがいをもって安全にかつ安心して生きていきたい、経験や能力を生かして社会に役立ちたい、身体が不自由になっても住み慣れた地域でゆったりと暮らしたい、という私たちの願いを実現するためには、私たちが住む地域の中でお互いにささえあい・助け合っていく組織が新潟にも必要と考えました。」(ささえあい生協・設立趣意書)
 加入申込時に記入してもらったアンケートには、それぞれの夢や希望、思いがあふれていた。
  1. “やってみたいこと”は、「団塊の世代の行く末を見届けること」、「福祉サービス」、「庭木の剪定」、「一人暮しの方の手助け」、「給食手伝い」、「年金相談」、「小回りの効く活動」、「陶器づくり」、「死ぬまで施設に入らず、自宅で安心して死ねるネットワークづくり」
  2. “人生の終わりまでに実現してみたい夢”は、「世界一周の船旅」、「どんなことでも支え合える近所づくり」、「最後はコロッと逝きたい」、「生涯現役で健康であること」、「連帯・持続可能社会の実現」、「世界の有名スキー場を長男と滑りたい」、「環境保護」、「地域に『茶の間』をつくりたい」、「広大な自然の中で演奏会・合唱を」、「日本百名山登山」、「富士山登山」、「生きがいのある趣味」…。
  3. “特技”は、「マージャン」、「ボランティア通訳」、「高齢男子のモモヒキ製作、お雑煮百選(文科省)」、「ちぎり絵」、「教育相談・支援」、「簡単な体操、あそび」、「カラオケ、オカリナ」、「犬や猫の世話」、「アウトドア案内」、「庭仕事」、「自然保護活動」、「話し相手」、「調理、掃除、草取り」、「傾聴ボイランティア、介護相談、友愛テレホン」など
  4. “資格”に至っては、各種の師・士がつく医師や弁護士など15種のほか、ホームヘルパー2級、日赤家庭看護法介助員、日赤救急法救急員、産業カウンセラー、健康づくりアドバイザー、スキー1級など数十種に及んでいる。
 ささえあい生協の財産は、以上のような組合員一人ひとりである。元気なうちはやりたいことをし、と同時に、いずれわが身に訪れる「老い」に対して準備を怠らず、そのために地域に仲間と安心・安全なシステムと場所を作りたい、そんな気持ちを多くの人が持っているようだ。しかし、それらの仲間や安心・安全なシステムや場所は有るだろうか? 無いか、有ってもココロモトナイ状態ではなかろうか。そうであるなら、自分たちで作っていくしかないのではないか。先日、仲間たちが「まちの駅」を立ち上げ、たまり場・しゃべり場などの拠点として期待が高まっている。

6.ささえあい生協は、未来を切り開く…か?

 私たちは、「ささえあい生協」という枠組みをつくった。後は、仲間を増やし、夢を一つひとつ実現していくだけだ。「老いることは、素晴らしいことだ。」といわれるような地域社会をぜひつくりたい。この先の十数年は、日本史上かつてない高齢化の急坂が続く。団塊世代の約680万人が、定年を迎え高齢者となっていく。さあ、地域デビューのときだ。高齢者夫婦世帯、独居老人、都市の高齢化、認知症高齢者などすべてが激増する。年金、医療費、介護保険ほか社会福祉・社会保障費などが増大する一方なので、公共サービスの在り方を見直さざるをえない。その場合、公共サービスを「市場化=営利化」するのか、市民による「社会化」するのか、が問われている。私たちは、人間の主体性、協同の価値(多様性、違いを認め合う)、コミュニティへの関与(未来への責任)を大切に、住民主体の新しい公共、協同労働をベースにして、地域づくりを進めていきたいと考えている。
 ささえあい生協の組合員はまだ約400人だ(06/11現在)。年齢構成は図3のとおりで、20歳代~90代までと幅広いが、大部分は50~60代。60代のみ男性が多いが、それ以外はすべての年代で女性のほうが多い(役員も50~60代がほとんどである)。
 さあ、団塊世代もその上下の世代も、みんなで「地域の底力」を発揮し、地域でいつまでも豊かな老後をゆったり暮らせるように、ささえあい生協で一緒に活動しませんか?
ささえあいコミュニティ
生活協同組合新潟
〒950-2026
新潟県新潟市西区小針南台3-16
TEL.025-378-6181
FAX.025-230-6680
MAIL sasaeai95@nifty.com
高齢者が主体となり、経験や知恵を出し合い、福祉事業を始め、ニーズにあった事業展開を目指しましょう。仲間と一緒にささえあい生きがいをつくり出す全県規模の生活協同組合です。

 
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